90.01

分野:
磁気物理
タイトル:
垂直磁気異方性を持ったMnGa/Fe/MgO/CoFe接合のトンネル磁気抵抗効果
出典:
“Dependence of Tunnel Magnetoresistance Effect on Fe Thickness of Perpendicularly Magnetized L10-Mn62Ga38/Fe/MgO/CoFe Junctions”, Appl. Phys. Exp. 5, 043003 (2012)
 
 
概要:
 垂直磁気異方性を有するMnGa/Fe/MgO/CoFeトンネル磁気接合のトンネル磁気抵抗(TMR)効果を調べ、室温で57%のTMR比が得られる可能性が示唆された。
 
 
本文:
 東北大学WPIの窪田らはMnGa/MgO/CoFe接合のトンネル磁気抵抗(TMR)比の上昇を目指し、薄いFe層をMnGa/MgO界面に挟んだ場合のTMR効果を実験的に調べた。現在、高密度不揮発性磁気メモリ(MRAM)の実現に向け、垂直磁気異方性を有する強磁性トンネル接合(MTJ)の研究開発が盛んに行われている。例えば産総研の薬師寺らはCoベースのMTJを用いて室温で高いTMR比(62%)と低い面抵抗(3.9Ωμm2)を実現している[Yakushiji et al., Appl. Phys. Lett. 97, 232508 (2010)]。一方、窪田らはMnGaを用いた垂直磁化MTJの開発に取り組んできた[Kubota et al., Appl. Phys. Lett. 99, 192509 (2011)]。MnGaベースのMTJはTMR比が低い(室温で10%以下)、面抵抗が高い(105Ωμm2)といった応用上の欠点があった。しかし、CoベースのMTJと同程度もしくはそれ以上の垂直磁気異方性(107erg/c.c.)を有しながら、ギルバート減衰定数は他の強磁性材料に比べて1桁程度小さい(α~10-3)ことから、MnGaベースのMTJは高い熱擾乱耐性と低いスピントルク磁化反転電流を持つMRAMの実現に向けた重要な研究対象となっている。MnGaベースのMTJのTMR比が低い原因の1つと考えられているのがMnGaとMgOの間に存在する7%程度の格子ミスマッチである。本研究で窪田らはFe層の挿入によって格子ミスマッチを減らし、Fe層の厚みが1.1nmの時に室温で24%のTMR比を得ることに成功した。本研究ではMnGaとFeの間に交換相互作用が働くこと、CoFeとMnGa/Feの保磁力が異なることから、2層(MnGa/FeとCoFe)の磁化を反平行にはできないと考えられている。窪田らは磁化曲線とTMR比の磁場依存性との比較から、完全な反平行状態が実現できれば57%のTMR比が得られると主張している。MnGaベースのMTJの優位性を示すには、そのような反平行状態をいかに実現するか、また面抵抗をいかに減らすか、スピントルク磁化反転を実験的に確認できるか、が今後の課題となるであろう。

(産総研 谷口 知大)