116.02

分野:
磁気物理
タイトル:
メタロクラウン単分子磁石の磁気構造を磁気コンプトン散乱で理解する
出典:
Aniruddha Deb, Thaddeus T. Boron, Masayoshi Itou, Yoshiharu Sakurai, Talal Mallah, Vincent L. Pecoraro, and James E. Penner-Hahn, J. Am. Chem. Soc. Vol. 134, p. 4889 (2014).
 
 
概要:
 Gd2Mn4, Dy2Mn4および Y2Mn4メタロクラウン単分子磁石のスピン構造を磁気コンプトン散乱を用いて調べた。Gd2Mn4, Dy2Mn4において、希土類4f電子のスピンとMn3d電子のスピンは反平行であった。Gd2Mn4とY2Mn4では全磁気モーメントに対する軌道磁気モーメントの寄与が小さいが、 Dy2Mn4スピン磁気モーメントのみの寄与より軌道磁気モーメントも寄与が大きいことがわかった。さらに、 Y2Mn4ではO2p軌道のスピン磁気モーメントが見出された。これらの結果は、単分子磁石の特性の設計に有用である。
 
 
本文:
 単分子磁石は高スピンの基底状態とイジング型の磁気異方性のために複雑な挙動を示す。高密度磁気ストレージ、量子情報デバイス、スピントロニクス、磁気冷凍などへの応用の可能性も検討されている。しかし、これまでの分子磁石は磁気異方性が小さかった。Aniruddha DebらはGd2Mn4, Dy2Mn4および Y2Mn4などメタロクラウンと呼ばれる単分子磁石を探索し、そのスピン磁気モーメント、軌道磁気モーメントを磁気コンプトン散乱を用いて調べた。
 磁気コンプトン散乱はスピン磁気モーメントのみを観測し、SQUID磁力計などで全磁気モーメントを測定しておけば軌道磁気モーメントが測定できる。X線磁気円二色による測定と異なり、直接スピン磁気モーメントを測定できる利点がある。また、磁気コンプトン散乱のエネルギースペクトル(磁気コンプトンプロファイル)は運動量空間の波動関数を観測するため、化学結合に関する情報を得ることができる。
 測定の結果、希土類の4f電子、Mn3dt2g、Mn3d3z2-r2、O2pに分離したスピン磁気モーメントの絶対値を求めることができた。Gd2Mn4, Dy2Mn4において、希土類4f電子のスピンとMn3d電子のスピンは反平行であった。Gd2Mn4とY2Mn4では全磁気モーメントに対する軌道磁気モーメントの寄与が小さいが、 Dy2Mn4スピン磁気モーメントのみの寄与より軌道磁気モーメントも寄与が大きいことがわかった。さらに、 Y2Mn4ではO2p軌道のスピン磁気モーメントが見出された。これらの結果は、単分子磁石の特性の設計に有用である。

(群馬大学理工学府電子情報部門 櫻井 浩)