75.02

分野:
磁気物理
タイトル:
Application of magnetic Compton scattering for spin-specific magnetic hysteresis measurement (和訳:磁気コンプトン磁気散乱のスピン選択ヒステリシス測定への応用)
出典:
Journal of Synchrotron Radiation 17, pp. 321-324 (2010)

国際結晶連合(IUCr)ニュースレターハイライト
http://journals.iucr.org/services/newsletter/newsletter-articles.html

高エネルギー加速器研究機構ハイライト
http://www.kek.jp/ja/news/highlights/2010/MagneticHysteresis.html

 
概要:
磁気コンプトン散乱を利用しスピン選択ヒステリシス曲線(Spin Selective Magnetization Hysteresis (SSMH))を測定する手法を開発した。TbCo垂直磁化膜について測定した結果、VSMにより測定した磁化曲線とスピン選択的磁化曲線は一致した。
本文:
 原子力研究開発機構の安居院あかねらは、磁気コンプトン散乱がスピン磁気モーメントのみを観測することを利用し、磁気コンプトン散乱の磁場依存性を測定し、スピン磁気モーメントのみのヒステリシス曲線(Spin Selective Magnetization Hysteresis (SSMH))を測定する手法を開発した。これはX線磁気円二色性(X-ray Circular Magnetic Dichroism (XMCD))を利用した元素選択的磁化曲線(Element Selective Magnetization Hysteresis (ESMH))測定と相補的関係にあるが、スピンの絶対値が得られる特徴がある。また、高エネルギーX線を利用するためバルク敏感であり、高真空などの設備は必要ない。実験は高エネルギー加速器研究機構KEK-PF-ARNE1A1で行われた。測定試料はTb33Co67アモルファス合金の垂直磁化膜である。測定の結果、VSMによる全磁気モーメントの磁化曲線とスピン磁気モーメントのみの磁化曲線を比較したところ、ほとんど挙動が一致することがわかった。さらに、Tbのスピン磁気モーメントとCoのスピン磁気モーメントは逆向きであることが確認された。
 磁気デバイスでは、TMR効果、GMR効果などスピン磁気モーメントの特性を利用する場合とAMR効果や垂直磁気異方性のように軌道磁気モーメントの特性を利用する場合が考えられる。スピン選択磁化測定の開発は磁気モーメントの磁場応答を利用する磁性体材料開発分野で新しい研究手段として利用されることが期待される。 

(群馬大学 櫻井 浩)