71.02

分野:
磁気物理
タイトル:
単一の金属ナノ粒子における長いスピン緩和時間を観測
出典:
“Long spin-relaxation time in a single metal nanoparticle” P. N. Hai, S. Ohya, and M. Tanaka, Nature Nanotech., published online on July 4, 2010.
 
概要:
強磁性金属MnAsの単一ナノ粒子が2Kにおいて10マイクロ秒という長いスピン緩和時間を有していることを示した。これはバルク金属のそれよりも7桁大きく、またコバルトナノ粒子のおよそ100倍である。
本文:
 
半導体のスピン緩和時間は通常100ナノ秒程度であり、バルク金属の場合はピコ秒スケールと小さい。しかし金属ナノ粒子ではサイズ効果によりスピン緩和時間は非常に大きくなり、コバルトナノ粒子において150ナノ秒に達することが報告された。これはナノ粒子化による伝導電子のエネルギー準位が離散化するためである。本研究ではGaAs半導体中にMnAs金属ナノ粒子を埋め込むことにより、粒子の界面の影響を抑えることによって長いスピン緩和時間を得た。試料は分子線エピタキシー法と微細加工技術を用い、MnAsナノ粒子が埋め込まれたGaAs薄膜(GaAs:MnAs)を有するトランジスタ構造を作製した。GaAs:MnAsの上にMnAsのソース電極とドレイン電極を堆積しそのギャップサイズを小さくすることで単一ナノ粒子を媒介としたトランジスタ構造にしている。この構造にゼロ磁場と10kG磁場とを印加したときのトンネル磁気抵抗の変化を測定し、ソース・ドレイン間のバイアス電圧依存性を求めると、クーロンブロッケード効果によってこの抵抗変化が振動していることが明らかになった。この結果を理論計算と比較するとスピン緩和時間はおよそ10マイクロ秒であることが分かった。以上のような長いスピン緩和時間はGaAsとMnAsとの界面が急峻であること、またMnAs表面の不純物が存在しないことによるものと考えられる。 
 

(東大物性研 谷内敏之)