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分野:
磁気物理
タイトル:
第32回化合物新磁性材料専門研究会「酸化物遍歴電子磁性体における最近の話題」
出典:
X-Ray Magnetic Circular Dichroism of a Valence Fluctuating State in Eu at High Magnetic Fields, Y. H. Matsuda, Z. W. Ouyang, H. Nojiri, T. Inami, K. Ohwada, M. Suzuki, N. Kawamura, A. Mitsuda, and H. Wada, Physical Review Letters 103, 046402 (2009), 大型放射光施設(SPring-8)プレスリリース
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2009/090728
概要:
 2009/3/6早稲田大学大久保キャンパスにて開催、参加者は28名であった。本研究会ではCo酸化物およびRu酸化物磁性体における遍歴電子の織りなす興味深い磁性や電気伝導特性に関する最近の研究成果を、基礎から応用に至るまで当該分野の講師陣に紹介していただいた。非常にバラエティに富んだ話題で聴衆の興味を引き、また極めて活発な討論がなされ、実りの多い研究会となった
本文:
 

  1. 「Aサイト秩序型ペロブスカイトSr0.75Y0.25CoO2.625の磁性と伝導」小林航(早大)
    Aサイト秩序型ペロブスカイトSr0.75Y0.25CoO2.625の磁性-伝導-構造の相関について報告がなされた。特異な磁性の起源が軌道秩序を伴う高スピン状態と中間スピン状態間のフェリ磁性であることが示唆された。
  2. 「ペロブスカイト型Ru酸化物 A(Ru,Mn)O3 (A=Sr, Ca) の遍歴電子系の磁性」川中浩史(産総研)
    ペロブスカイト型Ru酸化物A(Ru1-xMnx)O3 (A=Sr,Ca)において、SrRuO3の金属状態、遍歴電子系の強磁性状態から、Mn置換による磁気的、電気的相転移の報告があった。Sr(Ru1-xMnx)O3系ではMn置換による強磁性の消失、反強磁性の出現、それに伴う金属-絶縁体転移が確認され、Ca(Ru1-xMnx)O3系では中間組成で出現する強磁性が遍歴電子強磁性の特徴をもち、さらに低温で強磁性と反強磁性が共存することが示され、これに関して議論がなされた。
  3. 「Ba1-xSrxRuOの「異常な」異常ホール効果」小林義彦(東京医大)
    Ba1-xSrxRuO3に見られた特異な異常ホール効果について、skew散乱・side-jump散乱を基にしたこれまでの理論的枠組みで実験結果の大半の部分が説明可能であることが示された。一方、低温・中間磁場領域に従来の理論では説明できない余剰項が存在し、スピンカイラリテイとの関連が議論された。
  4. 「遍歴か局在か? 分類困難なルテニウム酸化物たち」佐藤博彦(中央大)
    水熱法で得られたパイロクロア酸化物Ca2Ru2O7と三次元直交ダイマー格子を持つ(Ba1-xSrx)2Ru3O9について紹介された。いずれも遍歴系でありながら、結晶構造の特徴を反映した異常な磁性を示すことが報告された。
  5. 「導電性Ru酸化物薄膜の電極としての応用」舟窪浩(東工大)
    誘電体メモリのデバイス開発の現状と、デバイス用の電極においてRu酸化物薄膜が非常に有望であることが多くの研究結果を挙げて紹介された。その後ペロブスカイト構造・パイロクロア構造をもつRu酸化物薄膜における講演者の研究成果および今後の展望についての報告があった。

(東京医大 小林義彦)

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