47.01

分野:
磁気物理
タイトル:
磁気コンプトンプロファイルによるYTiO3における3d 電子の軌道秩序の研究
出典:
Magnetic Compton Profile Study of Orbital Ordering State of 3dElectrons in YTiO3
Naruki Tsuji, Masahisa Ito, Hiroshi Sakurai, Kosuke Suzuki, Kei Tanaka, Kensuke Kitani, Hiromichi Adachi, Hiroshi Kawata, Akihisa Koizumi, Hironori Nakao, Youichi Murakami, Yasujiro Taguchi, and Yoshinori Tokura
JOURNAL OF PHYSICAL SOCIETY OF JAPAN, Vol 77/2 p. 023705, 2008.
概要:
 YTiO3の磁気コンプトンプロファイルを測定して、Ti3d 電子の反強磁性軌道秩序状態を直接的に観測することに成功した。さらに、スピン磁気モーメントのみを直接測定し、軌道磁気モーメントが消失していることを見出した。
本文:
 
軌道秩序状態にあるYTiO3のTi3d 電子はdyz軌道とdzx軌道(t2g)の線形結合で表されると考えられている。その係数はNMR、偏極中性子回折、共鳴X線散乱、XMCD、X線磁気回折などから求められているが、観測手法によってばらつきがある。また、モデルでは波動関数を実関数としているが、軌道磁気モーメントの観測によってその妥当性が判断される。

 最近、磁気コンプトンプロファイルは基底状態の波動関数の対称性を直接観測する手法として、強相関電子系や垂直磁化膜の測定が報告されている。さらに、スピン磁気モーメントのみを直接測定できる手段として確立している。

 群馬大学の伊藤正久教授らは、YTiO3単結晶の磁気コンプトンプロファイルを測定し、求められたスピン磁気モーメントと磁化測定がほぼ同一の値をとっており、軌道磁気モーメントが消失していることを見出した。この結果は、波動関数のモデルが実関数で記述できることを示す。さらに、磁気コンプトンプロファイルの異方性の測定結果の解析から、従来の報告よりもdyz軌道の割合がわずかに大きいことをみいだした。この結果は、バンド計算などの理論との直接的比較の必要性を示している。

 磁気コンプトンプロファイルは波動関数の精密測定を行うことができるため、軌道秩序に関する理論的研究の発展に寄与すると期待される。さらに、磁気コンプトンプロファイルがスピン磁気モーメントを選択的に観測する特徴をいかし、スピン磁気モーメントのヒステリシス曲線を測定できるスピン磁力計の開発も期待される。