22.03

分野:
磁気物理
出典:
第61回日本物理学会年次大会 (2006.03.27-30)
タイトル:
強誘電性の発現には磁気長周期秩序が大きな寄与
概要:
 東北大学多元研の有馬らは、磁性誘電体であるペロブスカイト型希土類マンガン酸化物RMnO3のマルチフェロイックな性質の起源が、スピンフラストレーションを伴う長周期スピン秩序構造によるものであることを明らかにした。微視的な視点から反強磁性体が強誘電性を示す起源を明らかにしたことにより、電子のスピンといった磁気的な自由度を誘電体に直結させた、新たな機能性材料として期待される。
本文:
 
長周期スピン秩序に起因すると考えられる強誘電性がフラストレーションスピン系において次々と発見されている。これらの系がなぜ強誘電性を示すのかはよくわかっていなかった。東北大学多元研の有馬らは、ペロブスカイト型希土類マンガン酸化物RMnO3のマルチフェロイックな性質の起源が、イオン配置の影響を受けた磁気秩序が強誘電性を誘起する相互作用つまり「格子がスピン配列によって受ける」相互作用にあることを明らかにした(第61回日本物理学会年次大会29pSB-8)。

 ペロブスカイト型希土類マンガン酸化物RMnO3では酸素イオンを介した超交換相互作用が磁性を支配することが多い。超交換相互作用は遷移金属の種類だけでなく、イオン配置にも敏感である。イオンの配置がスピン間の相互作用を及ぼす効果の中で磁性誘電体において、もっとも重要な働きを示すのは反対称交換相互作用と呼ばれる効果である。これは二つの磁性イオンの結合に反対称性があればスピンは平行または反平行の配置をとり、反対称性がなければスピン間に角度をつけようとするというものである。この相互作用はDzialloshinski Moriya(DM)相互作用と呼ばれ、酸素のイオンの変位方向に支配されるベクトルDと 2つの磁性イオンのスピンの外積の内積で表される。系の中に、この相互作用と横滑りらせん磁性構造が存在すれば、酸素が一様に変位し、反転対称心がずれることで全エネルギーを下げることができる。有馬らはこれらのことがRMnO3系で実験的に明らかにし、(Tb,Dy) MnO3の磁気構造は、常誘電相ではコリニアな正弦波型の磁気構造であるのに対し、強誘電相では横滑り型のらせん磁気構造を示すことを解明した。これらの強誘電発現機構は巨大な電磁気特性の発現とも密接にかかわっている。

 これらの微視的観点からの強誘電性の発現機構が明らかなったことにより、磁性誘電体の電磁気効果を用いたデバイスへの利用を促進することが期待される

(高輝度光科学研究センター 水牧仁一朗)