20.01

分野:
磁気物理
出典:
Phys. Rev. B, 72, 172410 (2005)
タイトル:
熱アシスト記録におけるL10 FePtナノ粒子のスピンダイナミクス
概要:
 Seagateを中心とする研究グループは,磁性体の原子スケールモデル(atomic-scale model)とランジュバン方程式を組み合わせ,L10 FePtナノ粒子のスピンダイナミクスを計算した.そして,粒子の全磁化を巨大な1スピンとして取り扱う古典モデル(Brown理論)の場合と比較し,特に熱アシスト記録で想定される高温領域において,両者の違いが顕著になることを示した.
本文:
 新しい記録方式として熱アシスト記録(HAMR)が注目され,超高密度化の可能性が議論されている.こうした議論を定量的レベルに発展させるには,記録時の加熱温度における磁化のダイナミクスを知る必要がある.Seagateを中心とする研究グループは,HAMR用記録材料として有望視されるL10FePtナノ粒子に関し,その磁性及びスイッチング機構の温度依存性について計算を行った.ベースにした手法は,原子スケールモデル(atomic-scale model)とランジュバン方程式を組み合わせたもので,第一原理計算とスピンダイナミクスを繋ぐ狙いで,ここ数年間,彼等が発展させてきたものである.既に,彼等は上記モデルを用いて,L10FePtの磁気異方性の温度依存性を定量的に説明することに成功し [ Europhys. Lett.69, 805 (2005) ],今回の報告はその成果をベースに,更にL10FePtナノ粒子の磁化ダイナミクスにまで発展させたものである.興味深い計算結果として第一に挙げられるのは,粒子径が2 nm程度を切ると磁気異方性に顕著な有限サイズ効果が現われ,それが彼等が主張する2イオン異方性に起因している点である.第二に,低温領域(kBT << 障壁 ・E)に限れば,今回のモデルから計算したスイッチング時間は,全磁化を巨大な1スピンとして扱う古典モデル(Brownの理論式)と良く一致するものの,より高温の領域では古典モデルは不適切なものになることが挙げられる.この違いは,Brown理論と異なり,今回のモデルでは磁性粒子内の内部自由度まで考慮されていることに起因しており,高温領域において粒子内のスピンの平行性が崩れるためである.ここ数年間,Seagate社はHAMR研究に注力し,その実用性能の見通しに関し同社の LyberatosとGuslienko が既に計算結果を報告してきた.[J. Appl. Phys.94, 1119 (2003) ] この計算をより定量的なものに仕上げていくには,本報告のような粒子の内部自由度を取り込んだ検討結果を盛り込んでいく作業が必要である. 

(東北大学 北上 修)