トップページ > 技術情報 > 技術情報サービス > 磁気物理 > 15.04(低温物理国際会議LT24 フロリダ、USA (2005.08.11-17,))

15.04(低温物理国際会議LT24 フロリダ、USA (2005.08.11-17,))

分野:
磁気物理
タイトル:
低温科学の最近の話題の変化 (LT24から)
概要:
 低温物理国際会議(LT24)が2005/08/11-08/17にフロリダ(USA)で開催された。最近の低温科学の現状を反映して、大きな話題があまりなく、ヘリウム物性中心の伝統的な研究を再考する動きと、ナノ科学・情報科学という新しい応用を目指す動きが並行するという特徴が見られた。
本文:
 2005年8月11日から17日の期間、USAフロリダ州オーランドで第24回低温物理学国際会議(24th International Conference on Low Temperature Physics, LT24)が開催された。これはIUPAP(国際純粋応用物理学連合)が主催し固体物理の最大級の国際会議のひとつで、参加者・発表件数も1000を越え、超伝導、超流動、磁性、強相関電子系などがトピックスとなっている。

 会議は組織委員の挨拶に続いて、ロンドン賞受賞講演として、ヘリウム物性に関するもの2件と高温超伝導体のSTMに関するもの1件が行われ、その後低温物理の量子情報への応用に関する基調講演で始まった。前回大会までは多くの要人による講演が集中したが、高温超伝導を中心とする強相関系がやや影をひそめ、ヘリウム物性を中心とする伝統的な低温科学を再考しようという動きと、逆にナノ科学や情報科学といった新しい潮流が並行するという変化が見られた。かつての高温超伝導のように、立ち見の聴衆が多数出るような共通のビッグ・トピックスがなく、無理に集中的なテーマを設定しなかった組織委員会の慎重な姿勢が伺えた。ひとつには、伝統的なヘリウム中心の低温科学に強い、フロリダ大学をはじめとする組織委員の意向が出たという理由も考えられる。実際には、これといった突出した話題のない現在の低温科学の現状をそのまま反映したというのが真実であろう。もはやグラントの取れなくなった強相関系の研究を離れて、ナノ科学や情報科学に重心を移すアメリカの傾向は、世界的に広がる可能性も高く、今後の情勢を探るうえでは非常に有意義な会議だったのかも知れない。

 磁性分野では、量子効果を狙った低次元系の研究成果も多かった。一方、最近急速に進展している新しい話題として、スピン伝導の応用を目指すスピンエレクトロニクスの講演が目立った。とくに若手による重要な講演が多く、この分野の世代交代が進んでいることがうかがわれ、将来に向けての明るい材料であった。

 次回は2008年にアムステルダムで開催されることが決まった。そのときには、低温科学あるいは磁性科学の急速な発展をもたらす大発見が報告されることを期待したい。

(日本原子力研究所 坂井 徹)
原稿依頼:日本原子力研究所 安居院 あかね