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13.02(J. Am. Chem. Soc., 127, (2005) 8889 )

タイトル:
物質設計による新しい強磁性強誘電体Bi2NiMnO6
概要:
 京大化研の東らは、新しい強磁性強誘電体Bi2NiMnO6を設計、6万気圧の高圧下で合成することに成功した。(J. Am. Chem. Soc., 127, (2005) 8889.)強誘電歪みをもつビスマス・鉛ペロブスカイトにおいて、eg電子を持つ磁性イオンと持たない磁性イオンを互い違いに規則配列することで強磁性を共存させる物質設計は、他の系にも応用できると期待される。
本文:
 磁性と強誘電性が共存する物質は、多値メモリ材料(電荷のあるなし、磁気のSNの掛け合わせによる4通りの情報を記録できる材料)への期待から盛んに研究されている。また、TbMnO3やTbMn2O5にみられるように磁性と誘電特性の相関が大きければ、電場印加によって磁化を反転させる、超低消費電力のMRAM材料に応用することも考えられる。現実には磁性強誘電体は少なく、また、そのほとんどは反強磁性体である。磁気メモリとしての利用のためには、磁化の大きい強磁性、またはフェリ磁性体を開発する必要がある。
  京大化研の東らは、Bi2O3+NiO+MnO2を6GPa 800°Cの条件で処理することで、新しい強磁性強誘電体Bi2NiMnO6を得たと発表した。強磁性転移温度は140K、強誘電転移温度は485Kである。磁性強誘電対を得る古典的な方法は、Bi3+やPb2+と磁性イオンを組み合わせることである。PbTiO3の例にみられるように、空間的に張り出した6s2孤立電子対と、共有結合的なBi-O(Pb-O)結合が局所的な構造歪みを安定化し、反転対称性の破れた強誘電的結晶歪みを増大する。一方、金森―グッドイナフ則によると、t2g6eg2の電子配置を持つNi2+イオンと、t2g3のMn4+を酸素を介して直線的に配置することで、強磁性絶縁体が得られると期待される。
 放射光X線粉末回折による構造解析の結果から、Bi2NiMnO6ではまさにこのメカニズムで強磁性と強誘電性が共存していることがわかった。室温では、Bi3+の6s2孤立電子対の規則配列によって、反転対称のない構造(空間群C2)が実現している。一方、イオンサイズが大きく違うNi2+とMn4+が自発的に岩塩型の規則配列を起こすことでNi2+-O-Mn4+結合が生じ、強磁性が実現している。ビスマス・鉛ペロブスカイトにおいて、eg電子を持つ磁性イオンと持たない磁性イオンを互い違いに規則配列することで強磁性を共存させる物質設計は、Bi2NiMnO6以外の物質にも応用できると期待される。

(高輝度光科学研究センター 水牧 仁一朗)