8.04

8.04:(第18回日本放射光学会年会より)

放射光を用いた磁性研究の最近~MCD-PEEMなど~

 
  平成17年1月7日から9日にかけて佐賀県鳥栖市にて第18回日本放射光学会年会が開催され、口頭、ポスター、企画講演等合わせて400件を越す発表が行われた。磁性分野でも数多くの興味深い講演が成された。
  放射光を用いた磁性研究としては左右円偏光での吸収の差である磁気円二色性(MCD)などが一般的である。最近ではMCDと光電子顕微鏡(PEEM)を組み合わせたMCD-PEEMとも呼ばれる測定法が開発されている。木下豊彦氏(東大物性研)はこのMCD-PEEM測定法の最近の発展に関して報告した。その中で空間分解能が100nm以下であるため、容易に磁区ドメイン観察などミクロ領域での研究が可能であることや磁気線二色性(MLD)とも組み合わせることで反強磁性のドメイン構造観察が行われていることなどの報告がなされた。実際にMCD-PEEMの例としては小嗣真人氏(HiSOR)らの鉄隕石(NiFe)の磁気構造観察やMLD-PEEMの例として奥田太一氏(東大物性研)らのNiO(001)面での反強磁性磁区ドメイン観察などの報告がなされていた。今後これら装置が次々とユーザー利用に供されていけば、ナノ~マイクロレベルの構造をもつ高密度記録媒体の有力な評価手段になっていくと思われる。
  また、雨宮健太氏(東大院理)らは学会奨励賞を受賞した講演の中で、深さ分解したMCD測定法を開発し、それを用いた一酸化炭素吸着によるNi薄膜の磁性変化を報告した。Ni薄膜は一酸化炭素吸着によって表面層のみ磁化を失うことを明らかにした。この測定法はまだ表面と内部程度にしか分けられないが、多層膜の厚さ方向の磁性変化の調査など磁気記録媒体研究への応用が期待できる。
日本はまさに放射光大国といえる。SPring-8のみならず、KEK-PF、分子研、産総研、立命館大、広島大、佐賀と多くの放射光施設が次々と共同利用が可能になっている。上記の測定法だけでなく様々な磁性測定法が開発されており、それらを効果的に利用することで、基礎分野のみならず応用分野も益々発展していくと期待している。

(早大 田中真人)