3.01:Nature

タイトル:
カンチレバーによるシングルスピンの検出に成功
本文:
  IBMアルマデンのRugarらはAFMと同様なカンチレバーを用いて溶融石英中の単一のスピンの検出に成功し、その結果をNature 誌に報告した(Nature 430, 320(2004))。
  試料はガンマ線を照射した溶融石英で内部に1013から1014 cm-3 程度の不対電子を含む。この試料の単一スピン間の平均距離は200から500 nmと見積もられる。検出には先端に微小なSmCo磁石(150 nm)を付けたカンチレバーが用いられた。カンチレバーを試料表面直上でその共鳴周波数5.5 kHzで機械的に加振する。振幅は例えば16 nmである。この振動はレーザー光を用いたフィードバックループによって制御されている。この状態でバイアス磁場と2.96 GHzのマイクロ波を印加するとカンチレバーが単一スピンの近くを通り過ぎる瞬間に共鳴条件が満たされ、スピンの反転が起こる。スピンからカンチレバーに働く力はスピンの向きによって異なるので、スピンが反転するとカンチレバーの共鳴周波数が数mHzほど変化する。この微小な変化を大きなノイズの中から取り出すために彼らは、iOSCARという測定法を提案した。この方法は一種のロックイン検出であるが検出の途中でノイズによるスピンの反転が生じることを考慮して信号振幅による検出ではなく、インフェーズとアウトフェーズのノイズ強度の差から信号を抽出した点に特徴がある。
  この結果、彼らは1.6 Kにおいて単一のスピンを20-30 nm程度の空間分解能により各測定点に対して13時間の平均化処理の後検出することに成功した。ひとつの一次元スキャンにかかる時間は19日程度である。また、測定スペクトルからスピンの緩和時間は760 msecと見積もられた。

(阪大 鈴木 義茂)