第62回日本磁気学会学ナノマグネティクス専門研究会報告

共催:
IEEE Mag. Soc. Japan Chapter、日本大学
日時:
2014年11月26日(水) 13:30~16:50
場所:
日本大学駿河台キャンパス5号館
参加者:
19名

 2015年度のIEEE Distinguished LecturerであったPeter Fischer氏をメイン講師として迎えたチュートリアル講演および他2件の研究報告の構成で、X線光学を利用した磁性材料研究をテーマとした専門研究会を行った。

  1. “Magnetic soft X-ray microscopy – From nanoscale behavior to mesoscale phenomena”
    ○Peter Fischer (Lawrence Berkeley National Laboratory)

     透過X線顕微鏡:magnetic soft X-ray transmission microscopy (MTXM)を用いた磁気渦に関する最新の研究成果が報告された。顕微鏡の構成や基本性能に関する説明に引き続き、磁気渦の時分解測定による磁区構造、磁化分布ダイナミクスの動的観察結果が示された。MTXMの観察技術を利用したパーマロイ薄膜からなるナノドットの解析結果を用いて、磁気渦生成を伴う磁化反転過程における核生成がDzyaloshinskii-Moriya interactionの影響下にあることや、静磁結合したナノドットによる磁気演算回路の実現性に関して議論された。

  2. “Exploring ultrafast magnetization dynamics with XMCD-PEEM”
    Souliman El Moussaoui (Nihon Univ.)

     TbFe系光磁気材料についてX線磁気円二色性光電子顕微鏡(XMCD-PEEM)を利用した磁化反転過程の研究について報告された。交流磁場を印加した時の磁区観察像からMCD信号強度のラインプロファイルを取得して磁気共鳴線幅の解析が可能であることが示された。しかし、スピン構造を仮定した解析モデルについて希土類原子と遷移金属原子間の交換エネルギーの見積もりが不十分であるとの指摘がなされ、この点に関して詳細な意見交換が行われた。

  3. “Visualization of dipolar and exchange interaction energies in Nd-Fe-B nanocrystalline magnets using scanning transmission X-ray microscopy”
    ○Kanta Ono (KEK)

     微細結晶粒を有する熱間加工ネオジム磁石に関して、走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いた磁区観察と磁気特性に対する解析方法について報告された。STXMの信号強度分布をマイクロマグネティクス計算プログラムに取り込むことで、ネオジム磁石内部の静磁場分布および結晶粒子間の交換エネルギー分布の解析が可能となった。外部磁場印加の磁区観察によって得られた磁化反転パターンと静磁場、交換エネルギー分布を比較することで詳細な保磁力機構の議論が可能であることが報告された。

文責:三俣千春(物材機構)