第186回研究会報告「ナノ磁気制御及び検出技術の最先端技術動向」

日 時:
2012年11月2日(金) 10:20~16:50
場 所:
中央大学駿河台記念館
参加者:
48名

 高密度磁気記録や超高性能磁石などの開発には、磁性体のナノ構造領域における磁気情報の制御が必要であり、ナノメータオーダーの高い空間分解能を有する磁気情報検出技術が重要である。また、高速磁気記録や高速磁気センサーなどの開発には、サブナノ秒領域の時間分解能を有する技術が必要となる。そこで、本研究会ではナノメータ領域、サブナノ秒領域の研究で活躍している研究者を講師に招き、ナノ磁気制御及び検出技術に関する最新の動向を講演していただいた。当日は非会員2名、学生14名を含む合計48名の参加者を集め、活発な議論が行われた。以下に各講師の方々の講演の概要を記す。

  1. 「遷移金属強磁性体における磁性の電界制御」

    千葉大地1,2,島村一利1,河口 真1,小野新平3,深見俊輔4,石綿延行4,小林研介5,小野輝男1 (1京大,2JSTさきがけ,3電力中研,4NEC,5阪大)

     極限に近い薄さのコバルト超薄膜に絶縁膜を介して電圧を加えると、その磁力を消したり元に戻したりできることを見つけた。具体的にはコバルトを中心に強磁性遷移金属の磁性の電界制御に関して最近の実験結果が多数報告された。

  2. 「マイクロ波アシストにおけるCo/Ptナノドットの磁化反転挙動」

    岡本 聡,菊池伸明,古田正樹,北上 修,島津武仁 (東北大)

     ドットの異方性磁場に対して僅か数%程度のrf磁場印加により,著しい反転磁場の低減ならびに反転磁場分散の抑制が実現できた。これは大振幅のスピン波励起を起源とする磁化反転モードが起きていることを示している。

  3. 「強磁性共鳴法による磁気記録用磁性材料の磁気緩和定数の評価」

    稲葉信幸1,高橋 豊1,二本正昭2,大竹 充2,桐野文良3 (1山形大,2中央大,3東京芸大)

     強磁性共鳴法(FMR)を用いて測定したhcp,fcc,bcc結晶構造の各Co単結晶薄膜のダンピング定数αを結晶構造の観点から議論した。hcp-Co試料ではαが磁化容易軸方向で極小値を、困難軸方向で極大値をとり、結晶方向に依存する結果が得られたのに対し、fcc-Co試料では明確な結晶方向依存性が見られなかった。また、Ni-Fe単結晶試料のαを磁化状態に着目して2種類のマイクロ波(9GHz、35GHz)でFMR測定を行ったところ、試料が単磁区構造であれば飽和、未飽和状態に依存せずαが一致することが示された。

  4. 「ベクトル磁場検出・近接場磁気力顕微鏡の開発とその磁性材料・磁気デバイスへの応用」

    齊藤 準(秋田大)

     直流及び交流磁場に対し、試料表面での磁場検出を可能にすることで空間分解能を10nm以下に向上させた、磁場極性・方向を検出できる新規な磁気力顕微鏡を開発し、磁気記録媒体及び磁気記録ヘッドを例として、その有用性の実験結果が多数示された。

  5. 「近接場磁気光学顕微鏡による磁区観察の最新技術動向」

    石橋隆幸1,青柳光春1,蔡 永福1,塩田達俊1,小野浩司1,江本顕雄2 1長岡技科大,2産総研)

     光の回折限界を超える高い空間分解能を有するMO-SNOMの最新動向について紹介された。また、反射測定モードにおいて10 nmレベルでの磁区観察が期待できるアパーチャーレスMO-SNOMについても報告された。

  6. 「NdFeB磁石材料のX線磁気イメージング」

    小野寛太(KEK)

     最近のX線顕微鏡による磁気イメージングの進展について講演を行った。X線光学素子を用いた走査型透過X線顕微鏡では、15 nmの空間分解能で磁気イメージングが可能なことについて示され、この手法を用いたNdFeB磁石の詳細な磁区観察結果について報告がなされた。

  7. 「フェムト秒パルスレーザによるフェリ磁性体超高速スピン制御」

    塚本 新(日大)

     超短パルス光照射でフェリ磁性GdFeCoに誘起される新規なスピンダイナミクスが報告された。適切な照射条件下にて、反転過程で過渡的フェロ状態の出現と外部磁場無で磁化反転可能なプロセスが存在する事が示された。

文責:粟野博之(豊田工大)