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第216回研究会/第66回スピンエレクトロニクス専門研究会

ニューロモルフィックスピントロニクス

日 時:
2018年1月25日(木) 13:00 ~ 16:40
場 所:
東京大学伊藤国際学術研究センター
参加者:
46名

 スピントロニクスの脳型(ニューロモルフィック)情報処理応用に関する最新の研究動向について議論することを目的とし、この分野で活躍されている研究者を国内外からお招きしてご講演頂いた。当初、招待講演の1件としてNIST(米国)のMark Stiles博士のご講演を予定していたが、研究会開催数日前に生じた米国一部政府機関の閉鎖により来日がかなわず、予定よりも1件少ない4件の講演がなされた。学術的にも産業応用上も今後の大きな発展が見込まれる興味深いテーマでもあり、大学・研究機関・企業からの多数の方にご来場いただき、椅子を追加で運び込まなければいけないほどの満員の中で活発かつインタラクティブな講演と議論がなされ、有意義な研究会となった。講演の概要を以下に示す。

  1. 「Spin-orbit torque devices for artificial neural networks」
    ○深見俊輔(東北大)

     冒頭で不揮発アナログスピンメモリ素子に関する説明がなされた後、当素子が人工シナプスとして実装された人工神経回路網を用いて行った脳型情報処理の原理実証実験の結果が示された。反強磁性/強磁性ヘテロ構造におけるスピン軌道トルク磁化反転では無磁場中で磁化状態をアナログ的に制御できること、及びこれを人工シナプスとして用いた人工神経回路網においては脳のシナプスと同様な学習の機能が実現できることなどが紹介された。

  2. 「Neuromorphic computing with nanomagnet array」
    ○野村 光(阪大)

     複数の磁性ドットから構成される磁性リザーバーに関する研究が紹介された。前半では、磁性ドット間に働く静磁気相互作用を利用し情報の演算を行う手法、特定の磁性ドットの磁気異方性を実効的に0とすることでシフトレジスタとして動作させる手法が紹介された。後半ではマクロスピンモデルを用いたシミュレーションにより、前述した手法を応用した磁性リザーバーによるバイナリタスクの結果が紹介された。そこでは20個の磁性ドットからなる磁性リザーバーが、連続した4つの入力から任意に選び出された2つの入力に対してAND、OR、XOR演算を学習できることが示された。

  3. 「Unstable nanomagnets as p-bits for stochastic neuromorphic circuits」
    ○Kerem Camsari (Purdue Univ.)

     熱安定性が極めて低く設計され、単一の素子としては確率的に振る舞う磁気トンネル接合素子を多数接続することで行う脳型情報処理に関する研究が紹介された。確率的に動作する磁気トンネル接合素子とMOSトランジスタの類似性の説明から始まり、それらをある原理に従って接続するとインバータや論理ゲート、加算器などを構築でき、さらにはそれらを発展させると現行のコンピュータが苦手とする最適化問題なども比較的容易に解けることなどが示された。

  4. 「Magnetization dynamics for neuromorphic computing」
    ○Julie Grollier(Thales)

     冒頭で述べた通りMark Stiles博士の来日がキャンセルとなったことから、当講演では当初Stiles博士の枠で扱われる予定であった脳型情報処理の概要説明がなされた後、講演者らが行っているスピントルク発振器を用いたリザーバーコンピューティングなどの研究が紹介された。前半ではナノスケールの固体素子でニューロンやシナプスを模した素子を実現することの意義などが分かりやすく説明された。後半ではスピントルク発振器を用いた音声認識の実証実験などが紹介された。

文責:深見俊輔(東北大)