第30回「磁性多層膜の新しい機能」専門研究会

日時:1998年2月5日
場所:銀座リビングプラザ(東京)
参加者:15名
講演題目: 「GMRによる磁性細線の磁化過程」
新庄輝也,重藤訓志(京大化研),小野輝男(慶応大)
「Fe超薄膜の電気伝導」
湯浅新治(電総研)
「強磁性単電子素子の電気伝導」
大野圭司,島田宏,大塚洋一(東大低温センター)
「異常分散効果利用X線反射率法によるGMR膜層構造解析」
平野辰巳(日立)


 今回は,基礎的な話題を中心に研究会が行われた。
 新庄氏は,多層GMR膜において階段状に加工した基板を用いることによって,比較的容易にCPP配置(電流が膜面に垂直)のGMR効果に関する情報が得られることを紹介した。また,微細な磁性体における磁化過程に対するプローブとして,GMR効果が有効であることを示した。
 湯浅氏は,FeとAuのエピタキシャル積層膜において,量子井戸準位を反映した膜厚に対する振動が,Kerr効果とHall効果の両方において観測されたことを報告した。また,Au/Fe/Auのように磁性層が単一の場合にも,GMR現象が見られるという,興味深い実験結果を紹介した。
 大野氏は,Co/絶縁体/Ni/絶縁体/Coのような強磁性体を電極として用いたトンネル効果素子において,中央の島状のNiの部分にある電子の個数に対応して,伝導特性がゲート電圧や印加磁界に対して周期的に変化すること(クーロン・ブロッケイド)を報告した。このように,電子が一個一個数えられるものとして測定にかかるということは,新鮮な印象を与えた。
 平野氏は,小角X線回折にてGMR積層膜の層厚を決定するにあたって,通常の Cu-Kα線のかわりに,Cu-Kβ線やCo-Kβ線を用いることにより,従来分離の難しかったCo,NiFe,Cuの層が精度良く分離できることを示した。これは,吸収端付近の原子散乱因子の異常を活用したものであり,これにより,スピンバルブの構造や劣化がより高精度に測定可能となった。

(日立   鈴木良夫)