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第61回マイクロ磁区専門研究会
日時:1998年12月16日(水) 13:30〜16:50
場所:大橋会館
参加者:46名

プログラム:
  1. NiO/α-Fe2O3反強磁性膜を用いたスピンバルブの磁気抵抗と耐熱性

    藤方潤一、林一彦、大嶋則和、斉藤美紀子、中田正文、大橋啓之 (NEC)

  2. スピンフィルタースピンバルブ

    福澤英明、上口祐三、鴻井克彦、岩崎仁志、佐橋政司 (東芝)

  3. 磁気記録におけるヘッド・媒体相互作用

    松尾東、鷹栖幸子、大竹隆高、品川公成 (東邦大)

  4. 細線磁壁移動特性 小野輝男 (慶応大)

藤方氏らにより、NiO/Fe2O3反強磁性膜における耐熱性改善効果、NiO膜の鏡面散乱効果、Zr層による膜平坦性の改善効果等に関する詳細な実験結果が報告された。比較的薄い(2 nm)Fe2O3層の積層により250 Oe以上の交換結合磁界が実現されている。Fe2O3/NiO

スピンバルブ膜におけるブロッキング温度以下での異方性軸の回転がFe2O3層の付加により抑制でき、この結果150℃、300時間の熱処理におけるMR比の劣化が20%程度に抑えられている。Fe2O3による特性改善効果の要因に関し、NiO/Fe2O3界面における合金層形成による結晶構造、格子歪みへの影響の可能性が指摘された。

藤澤氏らにより、スピンバルブ磁性層の超薄膜化に伴うMR変化率の低下を回避する層構成として、積層フェリ型スピンバルブ膜のフリー層側に導電層を形成するスピンフィルタースピンバルブの動作原理及び動作特性が報告された。本構成により層厚1.5nmにおいても約9%のMR比が維持できることが示された。素子のシート抵抗Rsは約20Ω、ΔRsは約2Ωであり、センス電流4mAで5mV/umの高出力が実現されている。導電層の詳細に関しては報告が控えられたがフリー層の軟磁気特性とスピンフィルタ効果の両立が材料選択上重要とのことであった。

松尾氏らにより、ヘッドと媒体の相互作用(HMI)を考慮した磁気記録再生過程のシミュレーションを種々のモデルで行った結果について報告が行われた。磁気テープを想定した微粒子媒体とMn-Znフェライトリングヘッドから構成される系について、記録過程と再生過程の各々におけるHMIの再生出力への寄与が定量的に示された。記録再生過程におけるHMIの寄与を比較する際、例えば、最適記録電流のもとで比較を行うなど基準のとり方に関する議論があった。また、高記録密度磁気テープ等より薄い媒体系への適用にも期待が寄せられた。

小野氏からは、磁性多層膜細線中の磁壁移動過程をGMR効果を通してリアルタイムに観測した結果について報告が行われた。人為的にくびれを形成した細線について磁壁ピニングを示唆する階段状磁気抵抗変化が示された。細線端部からの磁壁ニュークリエーション過程を利用して磁壁移動速度の駆動磁界依存性が測定され、磁壁移動度、磁壁抗磁力の実測値が報告された。また、磁壁定常速度を定める制動機構に関し、Walkerの定常運動解との比較検討がなされた。今後、細線磁壁のプロファイルがより明確になればダンピング定数等、動特性に関するより定量的な議論が行えるものと期待される。

研究会への参加者は46名であり各講演について活発な議論が展開された。研究会後

の懇親会においても打ち解けた雰囲気で懇談が交わされた。

(九州大学 松山公秀)