第27回 光スピニクス専門研究会報告

「光通信技術の進展と磁気光学デバイス」


日 時: 1999年7月8日(木) 2時〜5時
場 所: 東京工業大学 電気情報系会議室
参加者: 15名

講演題目:

1)「光通信用磁気光学デバイスと材料の動向」 梅澤 浩光(富士電気化学(株))
2)「半導体を用いた導波路型光アイソレータの設計」 竹中充,中野義昭(東大電子工学)

 今回は「光通信技術の進展と磁気光学デバイス」と題して、光通信技術の現状を踏まえ た磁気光学デバイスの利用状況と、より高度な光システムの実現に不可欠な導波路型光ア イソレータの提案に関しする2件をご講演いただいた。
 梅澤は、最近のデータ通信市場の急速な伸び(約2倍/3ヶ月)を支えるために通信容 量の大容量化は必至であり、これに波長多重化(WDM)技術などが答え、テラビット通信 の可能性や各家庭への高速通信のインフラが検討されているとし、これらの市場規模も米 国を中心として30%前後の伸びを示していると市場を分析し、このような大容量通信の進 む中で、余材をもって換え難い光学デバイスとして光アイソレータが特に最近注目されて きていると述べた。2.5Gbps以上の通信容量を得るためには光アイソレータが必須とされ ており、光源への戻り光を阻止し、ファイバーアンプでの励起光分離ためにはサーキュレ ータが不可欠である。また、磁気光学デバイスとして光アッテネータ、波長傾斜補償光回 路に関してその要素技術について述べ、最後に市場と低廉化は相乗的なものであるとし、 従来型の光アイソレータが今後暫く伸びていくと締めくくった。
 竹中は、まず既存の導波路型光アイソレータの構造を列挙し、その得失を述べた。 次に、半導体光素子との大規模集積化の観点からプロセスの容易さが重要であるとして、 半導体材料をベースとした新しい導波路型光アイソレータの構造を提案した。強磁性金属 (FeあるいはNi)を装荷した半導体光増幅導波路において、導波路光の強磁性金属による 吸収減衰量が光の伝播方向によって異なる効果を利用する。光増幅器は全体的な光の減衰 を補償する役割を担う。波長1.55um帯でのデバイス設計から温度依存性、波長依存性とも に実用的な値をもつ小型(デバイス長1.5mm程度)のものが作製可能であることを示し た。現在は理論計算にとどまっているが、デバイスの実証が進められているとのことで大 いに期待がもたれた。
 今回は光通信の現状と磁気光学デバイスの市場から個々のデバイスの解説、今後の新し いデバイス展開にいたるまで磁気光学デバイスの明るい将来が期待される話題で、会場で も活発な質疑が絶えなかった。
(電総研 安藤、NHK技研 河村)