第20回 光スピニクス専門研究会報告

磁性体ドット・量子ドットの伝導と光物性 − スピンを含む半導体 −


日 時: 1998年6月16日(火) 2時〜5時
場 所: 東京工業大学 電気情報系会議室
参加者: 20名


講演題目:

1)「磁性体ドットを含むIII-V族半導体超格子を用いたCPP磁気抵抗デバイス」 秋永弘幸(融合研・JRCAT)
2)「MBEによる Teベース II-VI族半導体の自己組織化量子ドットの作製と光物性」 黒田 眞司、寺井慶和、滝田 宏樹(筑波大学)



 秋永氏は6nm〜10nmの直径をもつMnAsドットを含むGaAsの作製方法とその磁気抵抗効果について紹介された。低温成長により作製した(Ga,Mn)Asを熱処理することによりMnAsドットがGaAsマトリックス中にエピタキシャル関係をもって析出する。微細加工技術を用いて測定された負のCPP磁気抵抗効果(30Kで数%程度)のメカニズムが議論されるとともに、この構造を用いて光や電場により磁気特性を制御する可能性についても提案があった。磁気特性、伝導特性には未解明な部分も多く残されているが、半導体・磁性体ハイブリッド素子の一つの方向として、興味ある講演であった。黒田先生は、最近化合物半導体において話題となっている自己組織化現象を利用した量子ドットの作製手法を、磁性スピンを含む半導体系に拡張する試みを紹介された。 MnTe, CdTe、(Cd,Mn)Teの量子ドットがMBE法やALE法によって作製できることを示されたのち、その発光スペクトルのZeeman分裂などの光物性が議論された。この手法によれば、粒径の揃った高品質な量子ドットが実現されるはずであり、その量子閉込め効果を利用して磁気光学効果の増大が期待できるのではないかとの指摘がされた。

(電総研 安藤功兒)