第6回光スビニクス専門研究会

ベロプスカイト型Mn酸化物の作製と物性

 標記専門研究会が,2月 13日(火)14時-17時東京農工 大学工学部で開催された.参加者は21名であった.べロプス カイト型Mn醸化物は,1994年Jinによって(La, Ca) MnO3 薄膜の1000倍に及ぶ大きな磁針抵抗効果(MR)が報告され, 基礎・応用両面からも注目されている物質である.本研究会で は, 実験と理論の立場から2件の講演が行われた.
 はじめに, 守友 浩氏(名大)は,作製と磁気輸送について 主として実験サイドの話を述べた.彼らはFZ法により作製し たLaxSr1-xMn03単結晶について精密な実検を行い, 電気抵抗 がニ重交換相互作用におけるスピン散乱のみで表されること, MR比が磁化Mの2乗に比例しその係数がバンド幅とバンド のフィリングによって決まるという近藤格子モデルでよく説明 できることなどを明らかにした.最後に, この系の相転移境界 付近で光励起によるキャリアのドーピングによって強磁性が発 現する可能性に触れ,光誘起磁性の応用への手がかりを明らか にした.
 一方, 井上順一郎氏(名大)は,理輪の立場から, 「ベロプス カイト型Mn醸化物のキャリアダイナミクス」について述べ た.はじめに, ドープしない絶縁性反強磁性 LaMn03につい て, Mnイオン内の t2g, eg 軌道間のHund結合,隣接Mnイオ ン間のeg電子のホッビング,隣接Mnイオン間のt2g軌道間 の反強磁性交換相互作用を考慮すると,面内で強磁性,面間で 反強磁性のスピン構造が実現すること,スピン波の励起に伴い 軌道のオーダリングが起きることを明らかにした.次に, ホールがドープされたときの系におけるキャリァダイナミクスを論 じ, ホールの有効質量が重いこと, MRが磁化の二乗に比例す ることなどを説明した.また.他の理論家の最近の展開につい ても触れ,ヤンテラー効果によりeg軌道の縮退が解けること によってMI転移を説明する動きなどについても紹介があっ た.
 基礎的でやや雑解であったが,最後まで熱心な討論が行わ れ,有意義な会合であった.
第7回は,4月23日(火)14時から,「有機物およびフラー レンの磁性と光吸収」というテーマで, 東工大(大岡山)にお いて開催される.
(農工大:佐藤勝昭)