78.02

分野:
磁気応用(生体磁気)
タイトル:
パーキンソン病患者におけるDBS手術後のトレモア緩和による脳-筋間コヒーレンスの増加
出典:
Cortico-muscular coherence increases with tremor improvement after deep brain stimulation in Parkinson’s disease, H. Park, JS Kim, SH Paek, BS Jeon, JY Lee, CK Chung, NeuroReport, 20 (16) pp.1444-1449 (2009).
概要:
 脳深部刺激療法(DBS, Deep Brain Stimulation)は、薬のみで十分な効果が得られないパーキンソン病などの不随意運動症が対象となるが、その生理学的メカニズムについては未だ解明されていない部分が多い。本研究では、DBS手術を受けたパーキンソン患者に対して等尺性運動時におけるMEG計測を行い、DBS刺激発生装置のOn/Off状態における脳-筋間コヒーレンス(cortico-muscular coherence)を比較、検討することでパーキンソン患者 におけるDBS手術後の運動制御能力の向上を明らかにした。
本文:
 最近、不随意運動症の患者に対するDBS治療が注目を浴びているが、金属製の刺激発生装置を用いるためにfMRIによる評価が困難である。脳磁界(MEG)装置も金属製物質によるノイズ発生の問題があるものの、空間フィルタによる信号処理を行うことでヒトの脳以外で発生するノイズの低減が可能になる。そこで、パーキンソン病患者にDBS手術を行い、手術後の運動制御能力の向上をMEGにより評価した。DBS手術を受けたパーキンソン病患者に等尺性運動をさせながらMEG計測を行った。測定されたMEGデータに空間フィルタをかけ、金属製の刺激発生装置によるノイズを低減させ、大脳皮質からの反応のみを取り出した。MEGと同時に測定したEMGデータの周波数解析を行い、刺激発生装置をONとOFFにした時の脳-筋間コヒーレンス(Cortico-muscular coherence)を比較した結果、刺激発生装置をONにしたときにベータ波周波数領域の Cortico-muscular coherence が高い値を示し、DBSによるパーキンソン病患者の運動制御能力の向上が明らかになった。本研究はMEGを用いてDBS治療の有効性を示した初めての論文であり、その後DBS手術を受けたパーキンソン病患者に対するAEF,SEFに関する報告がある(Airaksinen、2010)。

(Yonsei Univ. in Korea Bong-Soo Kim)

磁気応用

前の記事

78.01
磁気応用

次の記事

76.01