15.02(第25回武井セミナー(2005.7.15-16))

分野:
ソフト磁気材料、ハード磁気材料、磁気記録
タイトル:
第25回武井セミナー開催さる
概要:
 武井セミナーは平成17年7月15-16日に軽井沢でその25回目を開催した。武井セミナーの名称になる前にも「フェライト夏期セミナー」として第8回まで行ってきたので、通算すると33年間にも亘って開催されている。今回の内容の概要を報告する。
本文:
 武井セミナーは、フェライトの発明を始めとする磁性材料および電気化学分野で広く指導的役割を果たされた故武井武先生を中心とした集まりである。このセミナーはフェライトおよび金属等の軟・硬磁性材料、磁気記録、その時々のトピックスなど毎回10テーマを取り上げている。

 参加者は、武井先生、杉本光男先生とともにフェライトや磁気関連の研究・開発を行ってきたベテランの諸先輩が約2割、管理を行っている中軸の方が約2割、第一線で活躍している中堅および若手が約6割であり、その割合は毎年ほとんど変わりなく、若手が多く参加し、勉強し、交流を深めている。

 最初のセッションは、「異方性Sm-Fe-N粉末を用いた薄肉円筒状ボンド磁石」(住友金属鉱山 大森賢次氏)と「希土類永久磁石とその応用」(日立金属 谷川茂穂氏)で永久磁石の小型化、高性能化を達成するための考え方、技術について最近の進展が報告された。

 次は最近注目されている2つのデバイス、「磁気光学空間光変調器」(FDK 梅澤浩光氏)と「新構造デカップリングデバイス プロードライザの開発と応用」(NECトーキン 荒井智次氏)の講演があった。

 トピックス講演として「生分解性プラスチックの開発」(理化学研究所 土肥義治氏)は環境に適合する材料の開発に当たっての考え方が示され、電子材料の開発に携わる参加者にとって貴重な指針を与えてくれた。

 第2日の朝一番に杉本会長が「昔のフェライト・今のフェライト」と題して特別講演を行った。創生期のフェライトの話から始まり、「今のフェライト」との主な相違点を明らかにすることによって、進展した部分とともに「昔のフェライト」の重要な精神についても述べられ、日本のフェライトの将来に期待したいことが参加者に語りかけられた。

 「垂直磁気記録方式HDDの紹介と今後の展開」(東芝 田中陽一郎氏)は、製品化したHDDについての克服した課題と展開についてフレッシュな講演であった。

 「エアロデポジション法によるセラミック機能材料の合成と性質」(産総研 明渡 純氏)では、セラミックス膜の製法について詳細に報告された。特に磁性・誘電性セラミックスの参加者からは講演後も熱心に質問、意見交換がなされていた。

 次の2件は、ソフト磁性材料関係の話で「スピネル系フェライトの高周波化」(太陽誘電 河野健二氏)は、スピネル系フェライトでも非磁性酸化物と複合化することにより高周波化が達成できることをモデル計算および実際に作製した試料で提示した。また「積層インダクタ製品の技術トレンド」(TDK 佐藤秀和氏)は材料サイドだけでなく、設計デザインサイドから見た積層インダクタ製品の工程上の問題点、特性について講演された。

 噴煙たなびく浅間山麓の涼しい軽井沢で参加者の交流を深めることができた。

(埼玉大学 平塚 信之)