63.04

分野:
磁気応用
タイトル:
脳磁図等を用いた骨導超音波知覚メカニズムの解明
出典:
Mechanisms of bone-conducted ultrasonic (BCU) perception assessed by EEG and MEG measurements, S. Nakagawa, The International Society for Brain Electromagnetic Topography (ISBET2009) Kyoto, Japan, Sep. 29-Oct.2, 2009
概要:
骨導超音波は聴覚健常者はもとより重度難聴者にも明瞭な音として知覚されるが,その知覚メカニズムには不明な点が多い.脳磁図や脳波計測を用いて,骨導超音波知覚の神経生理メカニズムを調べた.その結果,通常の聴覚神経路で処理されているものの,末梢受容機構には特異性が見られることがわかった.
本文:
 
20kHz以上の超音波であっても,骨伝導で呈示された場合(骨導超音波)は明瞭な音として知覚される.この骨導超音波は聴覚健常者はもとより最重度感音性難聴者にも知覚される場合があることから,新型補聴器への応用が図られている.骨導超音波には通常の音(可聴音)とは異なる知覚特性が見られることから特異なメカニズムの存在が示唆されるものの,詳細は明らかにされていない.本研究では,脳磁図計測(大脳皮質活動を反映)や脳波計測(脳幹活動を反映),蝸電図計測(鼓膜付近に設置した電極によって蝸牛の電気活動を捉える)を用いて,骨導超音波知覚における聴覚神経路の関与を調べた.脳波および蝸電図計測の結果,骨導超音波であっても可聴音同様に蝸牛で受容された後,通常の聴覚路を上向することがわかった.一方,脳磁図計測によって明らかにされた骨導超音波に対する聴覚野活動は,可聴音において観察されるような周波数局在性(トノトピシティ)を示さなかった.この結果は,骨導超音波知覚においては蝸牛において営まれるはずの周波数分解処理が作用していないこと,つまりは蝸牛での処理が特異である可能性を示している.これらの結果は,新型補聴器の最適化や適応基準の設定において有用な知見を提供するものと言える.

(独立行政法人産業技術総合研究所 中川誠司)

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