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1.01 最近の国際会議から:PMRC2004

垂直磁気記録の研究者、世界より仙台に集まる!

第7回垂直磁気記録国際会議(PMRC 2004)が、5月31日-6月2日の3日間、垂直記録の発祥の地である仙台で開催された。参加者は約270名と盛況で、127件の報告がなされた。
  会議冒頭で垂直記録の発明者でもある岩崎委員長よりPMRCのこれまでの発展が述べられ、現在、垂直記録は統合のフェーズとなったとの講演があった。会議初日には、日立、東芝、Seagate、MaxtorというHDD大手企業からのシステムインテグレーションの報告があり、垂直磁気記録の実用化が近いことを窺わせた。今回の会議では、SeagateからKryder博士による170 Gbpsi(既発表)の世界最高の垂直記録による記録密度について系統的に述べられた。その一方で、日立、東芝、Maxtorからは実用化するための課題解決に力点がおかれた発表があり、100 Gbpsiに迫る記録密度で実際にドライブを試作した成果が報告された。これも垂直磁気記録の実用化が間近に迫っていることの表われと思われる。
  メディアではCo-Cr-Pt系膜から(Co-Pt-Cr+酸化物)の複合膜への移行が顕著で、実用化もこの膜からと期待されている。人工格子膜系材料も中間層等の検討で大幅な低ノイズ化が達成されてきている。将来、メディアとしては、磁気異方性の大きさからやはりFe-Pt系材料が最有力候補と考えられ、種々の微粒子構造膜の報告があった。ただし、微粒子化と結晶配向性向上の両立が課題といえる。また、記録の困難さが増すことも早期の実用化の懸念材料である。一方、Co-Pt系材料がここ当面の高密度化に十分応えられる磁気異方性を示すことが報告され、さらに、低温作製が可能なことからFe-Pt系材料と競合することが考えられる。
  記録機構ではヘッド磁界の傾きおよびメディア微粒子の分散(従来からの寸法分散よりも異方性分散)の影響がクローズアップされてきた。軟磁性裏打層については磁壁の形成を抑制するため、交換バイアスによるディスク半径方向への異方性付与が主流であるが、高BsのFe-Co-B膜に直接大きな半径方向異方性を付与することや無電解めっき法による裏打膜の作製という新しい報告があった。
  ヘッドは再生素子ではCPP-GMRがTMRの次として注目されているが、スピン注入トルクに基づくノイズ発現が新たな課題となることが報告された。さらに次世代として注目されているBMR効果では、多くの場合、偽効果と考えられるとの注意すべき報告があった。再生ヘッドではスピンエレクトロニクスの立場からの研究の重要性が増している。記録ヘッドでは磁極先端部の残留磁化による消去が実用化における大きな問題となっており、この抑制法についての報告がいくつかあった。1 Tbpsi記録を目指した記録ヘッドのデザインでは、軟磁性材料のBsの限界から磁界の強度と分布との両立で苦戦しているが、微小コイルを用いることで30 kOe以上の磁界を発生できる可能性が示され注目された。
信号処理では垂直磁気記録に特化されるわけではないが、トラック間干渉を考慮した処理や2次元符号化、パターンドメディア用信号処理、さらには、大幅な11 dB以下の低S/Nでも復調可能な将来の信号処理方式等についての報告があった。
  最終日には将来技術についての報告がなされた。垂直磁気記録でも従来方式では記録密度500 Gbpsiを超えると急激に困難さが増し、1 Tbpsiおよびそれ以上を達成するためには新規な記録方式の導入が必須と考えられる。本会議でもパターンドメディアやその作製法、熱補助記録方式、プローブ記録等の提案がなされた。どれが生き残る方式かは判らないが、少なくとも新規方式の導入が必須なことだけは確かである。

(秋田県高度技術研究所 本多直樹)

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