21.03

分野:
磁気物理
出典:
http://nssr.xtal.nagoya-u.ac.jp/~jssrr2006/
タイトル:
放射光学会年会が開催 (2006. 1. 7-9)
概要:
 第19回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムが、2006年1月7-9日に名古屋大学にて開催された。共鳴X線発光分光、X線天文学、コンパクト放射光光源の可能性、放射光の安定性と精密実験など多くの話題について企画講演が行われた。磁性関係の発表も多数あった。
本文:
 
第19回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムが、2006年1月7-9日に名古屋大学にて開催された。日本は世界でも有数の放射光施設保有国であるが、放射光を利用した研究を行う研究者は実験に応じて利用施設を選ぶため一同に会する機会は少ない。日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムは各地の放射光施設のスタッフやユーザーが一同に会する年1回の機会となっている。今回は企画講演として、共鳴X線発光分光、X線天文学、コンパクト放射光光源の可能性、放射光の安定性と精密実験、タンパク質構造の時間分解解析などがあった。磁性関係の研究・開発についても多数の発表があった。

 磁気コンプトン散乱強度には電子のスピン成分のみが寄与し、磁気モーメントは寄与しないことが知られている。兵庫県立大・坂井らは、磁気コンプトン散乱をプラス±90度の散乱角で測定することで、スピン成分磁気ヒステリシス曲線を得る手法開発をSPring-8 BL08Wで行っていると発表した。装置が完成すれば磁気測定の新しい手法として期待される。

 円磁気二色性を用い元素・軌道選択磁気ヒステリシスの手法は、SPring-8ではBL39XU、BL25SUで実現されている。これらに加え、産業界専用ビームラインBL16XUでも同手法の利用ができる設備を開発したと日立基礎研・平井らは発表した。元素・軌道選択磁気ヒステリシス測定の産業界で利用が進むことが予想される。

 一般に核共鳴散乱(メスバウアー)分光は放射性同位元素のガンマ線によってある原子核のエネルギー準位を共鳴励起し、それを利用して物質の電子状態を測定する。近年、放射光を利用してメスバウアー分光の手法が開発され極端条件下や回折条件下、メスバウアー線源に適当な核種がない場合などに威力を発揮している。高輝度セ・依田らは、SPring-8 BL09でこれまでに報告されている放射光核共鳴励起での最高のエネルギーである136keVの励起エネルギーをもつ57Feの放射光励起を初めて観測したと発表した。この結果から、将来利用できる核種を大きく広がると期待される。 

(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 安居院あかね)

磁気物理

前の記事

21.02
磁気物理

次の記事

20.01