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日本磁気学会第201回研究会/第53回スピンエレクトロニクス専門研究会報告

「スピン流を利用したスピン輸送現象の理解とその応用」

日 時:
2015年3月27日(金)13:00~17:05
場 所:
中央大学駿河台記念館
参加者:
39名

 近年「スピン流」の応用技術や検出技術は目覚ましい進歩を遂げており、基礎的な理論研究としての興味に留まらず、新規なデバイス創出の可能性をも秘めていることから大きな注目が集まっている。本研究会では、スピンエレクトロニクス専門研究会と共催し、基礎から応用まで幅広い観点でスピン流に関する様々な最先端の研究報告がなされた。
 スピントルク強磁性共鳴法やスピンホールトルクを用いた基礎的な物理現象に関する検討、巨視的な力学運動によるスピン流制御という斬新な観点におけるチャレンジングな取り組み、あるいは半導体中におけるスピン流制御という非常に応用に近い研究成果が報告され、非常に活発な質疑応答が展開された。

  1. 「力学運動を用いたスピン制御とスピン流生成」
    ○松尾 衛1,2,家田淳一1,2,針井一哉1,2,中堂博之1,2,高橋 遼3,小野正雄1,2
    齊藤英治1,2,3,前川禎通1,21原研,2JST-ERATO,3東北大)

     スピントロニクスに核スピンと力学的角運動量の自由度を組み込む試みについて紹介がなされた。特に力学回転の核スピンへの効果について、核磁気共鳴法を用いて調べた結果が報告された。また、レイリー波によって誘起される局所回転運動を用いた電子スピン流生成理論についての報告がなされた。

  2. 「スピントルク強磁性共鳴法によるスピンホール角とスピン拡散長の相関関係の計測」
    ○近藤浩太1,新見康洋1,2,福間康裕1,3,介川裕章4,葛西伸哉1,4,三谷誠司4,大谷義近1,2
    1理研, 2東大物性研, 3九工大, 4物材機構)

     スピントルク強磁性共鳴を用いたスピンホール角の測定法についての解説がなされた。また、4d、5d遷移金属のスピンホール角を系統的に調べた実験結果が報告され、それらの値が理論計算の結果とも定量的によく一致することが示された。さらに、10Kから室温までのスピンホール角の温度依存性を調べることで、白金においてはそのスピン拡散長の増加に伴いスピンホール角が小さくなる傾向が実験的に示された。

  3. 「スピンホールトルクによる電流駆動磁化制御」
    ○林 将光(物材機構)

     極薄の強磁性層をスピン軌道相互作用が大きい重金属層と、酸化物層などで挟んだ構造反転対称性が破れた薄膜へテロ構造における電流駆動磁化制御機構について紹介がなされた。膜面水平方向に電流を印加し、重金属層のスピンホール効果によって生成されたスピン流が強磁性層に進入し、磁化にスピントルクが作用した際の磁化や磁壁の応答について調べた結果が報告された。結果として、スピンホールスピントルクによって磁壁を駆動するためには、界面で異方性交換相互作用が必要であり、その大きさや符合が積層構造で制御できることが示された。

  4. 「外部電場によるシリコンスピンMOSFET 中のスピン輸送の制御」
    ○白石誠司,安藤 裕一郎(京大)

     非縮退半導体領域にあるn型シリコンへの室温スピン-スピン輸送を実現し、ゲート電圧、ソース=ドレイン電圧による電場印加によって、スピン信号・スピン緩和時間・スピン輸送長・Hanle型スピン歳差運動シグナルなど、様々なスピン輸送物性を制御することに成功したことが報告された。

  5. 「GaAs量子井戸中におけるドリフトスピンの電気制御」
    ○国橋要司,眞田治樹,後藤秀樹,小野満 恒二,寒川哲臣(NTT基礎研)

     GaAs量子井戸中をドリフトする電子スピンを可視化し、そのスピンダイナミクスを明らかにした研究結果が報告された。スピン軌道相互作用のゲート制御によりスピンの長距離輸送と歳差運動制御が可能となることが明らかにされた。

文責:落合隆夫(東芝),介川裕章(物材機構)