トップページ > 学術講演会・研究会 > 研究会 > 過去の研究会 > 日本磁気学会 第199回研究会/第54回ナノバイオ磁気工学専門研究会

日本磁気学会 第199回研究会/第54回ナノバイオ磁気工学専門研究会

「ワイヤレスエネルギー伝送技術 ~磁気工学の役割とバイオ医療応用~」

日 時:
2014年12月8日(月) 13:00~16:55
場 所:
中央大学駿河台記念館
参加者:
37名

 ワイヤレスエネルギー伝送技術は、既に広く実用されている。磁界は、多少の渦電流損失があるものの、人体を透過する。磁気共鳴画像診断装置(MRI)の利点のひとつである頭蓋骨、骨盤などの周辺部でも骨の影響を受けにくい撮像が可能なことには、磁界の透過性が活かされている。磁界は、比較的大きなエネルギー密度で体内にエネルギーを送り込むことも可能であり、発熱、輸送、給電など、医療に適用可能な現象や技術が検討されている。2007年にMITの研究グループが磁界共鳴方式の実験結果を発表してからは、電気自動車(EV)用給電等のワイヤレスエネルギー伝送技術の研究開発がさらに活発になっている。この研究会では、電磁誘導を主に利用するバイオ医療応用や磁界共鳴方式など、ワイヤレスエネルギー伝送技術に関連する最新の研究動向が報告され、いずれの講演においても活発な質疑応答がなされた。

  1. 「がん誘導加温治療を目指したワイヤレス給電によるがんダブルパンケーキ形アップリケータ」
    ○山田外史(金沢大)

    がん細胞を42~43℃で加温することにより殺傷する温熱療法に用いる誘導加温装置に関する講演であり、高周波磁界発生装置の構成、ダブルパンケーキ型コイルの構造、バックヨーク、ワイヤレス方式の励磁、並びに磁界の安定化のための制御法等について解説された。加温体には磁性ナノ粒子を用いている。ダブルパンケーキ型アップリケータは、体の上下に設置する励磁コイルであり、一方に通電し、他方は電磁誘導によりワイヤレスで給電する。共振周波数は100 kHz程度である。MnZn系フェライトのバックヨークや多重(並列)コイルによる磁場増強などが報告された。

  2. 「体内ロボット用ワイヤレスエネルギー伝送」
    ○水野 勉、卜 穎剛、水間淳一郎(信州大)

    撮像に加え、検体切除や薬剤投与の機構、自走機構などを備えた将来の体内ロボットを実現するためには、ワイヤレスエネルギー伝送が必要不可欠である。これはマイクロロボットに収納可能なバッテリーの体積には限界があり、長時間駆動を実現するためのバッテリーの大容量化が困難なためである。体内ロボット用ワイヤレス給電の概要に引き続き、オープンスペース形送電コイルの構造やアルミニウム製プレートによる電界シールドの効果、3軸に対応する受電コイルの構造などが説明された。国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)ガイドラインを遵守したうえで受電領域と受電電力を如何に確保するかという観点から実験結果が紹介された。

  3. 「磁界を利用するエネルギー伝送と医療応用」
    ○松木英敏、佐藤文博(東北大)

    電磁誘導方式によるワイヤレスエネルギー伝送技術には高結合型(変圧器型)と低結合型に分けられ、基本的には各々定電圧源、定電流源で駆動することなどが概説された。エネルギー伝送を水の流れに置き換え、これらの相異がわかりやすく説明された。停車中・走行中のEVへの給電や、埋め込み型人工心臓をはじめとする体内埋め込み型の電磁型医療機器を対象としたワイヤレス給電の実験結果が紹介された。高結合型の電磁誘導方式が先行しているが、今後は磁界共鳴方式や低結合型の電磁誘導方式が医療をはじめとした分野で注目されるであろうことが示された。

  4. 「磁界共振結合によるワイヤレス電力伝送とEVへの応用」
    ○居村岳広、堀 洋一(東大)

    電磁誘導、磁界共振結合(磁界共鳴)、電界共振結合(電界共鳴)、マイクロ波やレーザの利用など、ワイヤレスエネルギー伝送の各種方式が概説された。続いて磁界結合、電界結合、磁界共振結合、電界共振結合の4方式に分類し、LCR直列回路を用いた等価回路から求められる伝送効率及び伝送電力により各々の特徴が説明された。EVへのワイヤレス給電では、外径43.4 cmのコイルを用いた100 kHzの磁界共振結合により、30 cmのエアギャップで消費電力3.36 kW、総合効率88.3%を達成した実験結果が示された。

  5. 「電磁界を利用するエネルギー伝送 -電界結合と磁界結合の観点から-」
    ○平山 裕(名工大)

    電磁誘導において共振用コンデンサを用いる従来の方式と昨今注目されている磁気共鳴型ワイヤレスエネルギー伝送との本質的な違いがどこにあるのかという観点からの発表であった。磁気共鳴型は、伝送区間をトランスとして捉える方法と自己共振アンテナとして捉える方法に大別される。伝送機構を共振機構と結合機構に分解し、さらに結合機構を電界結合と磁界結合に分解した伝送モデルで考察した結果が紹介された。共振機構と結合機構の組み合わせとそれらの回路イメージが示され、例えば2007年のMITの実験は、磁界結合が支配的な自己共振を用いた間接給電と分類されることが示された。

文責:竹村泰司(横国大)