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第187回研究会報告(第46回ナノバイオ磁気工学専門研究会報告)

「磁気ハイパーサーミアと磁性ナノ粒子~医学・臨床の立場から」

日時: 2012年12月7日(金) 13:00~16:50
場所: 中央大学駿河台記念館
参加者:36名

 がんの温熱療法であるハイパーサーミアにおいて、体内の発熱体に対して体外から簡便にエネルギーを供給できる、磁気を利用する方法には大きな期待がかかっている。磁気工学としては、人体サイズのコイル・電源・回路システム、発熱体となるインプラントや磁性ナノ粒子の材料・構造などが研究対象となっている。また、磁性ナノ粒子のバイオ医療応用は、実用されている磁気共鳴画像診断(MRI)用造影剤や、このハイパーサーミア以外にも薬剤送達(ドラッグデリバリーシステム)、非ウイルス性の遺伝子導入キャリアなど多岐に渡って研究開発されている。本研究会では、磁気ハイパーサーミアと磁性ナノ粒子について、医学・臨床の立場から最新の研究を紹介していただいた。磁気工学に対する期待と課題を明確にして、今後の研究開発の方向性を見極め、磁気工学が一層、貢献していくことを意図した。
 以下の5件の講演において磁気と医療の多岐に渡る話題が提供され、いずれも活発な質疑が続いた。磁気医療応用に関連する研究動向と今後の展望を討論する機会として、多くの皆様方にご参加いただき、有意義な研究会となった。体内深部に如何に温熱治療に十分な磁場を印加するか、温熱治療に適した磁性ナノ粒子の設計と生体親和性などに関しては、今後の研究会において各課題にフォーカスしてさらに議論を深める機会を設けることが必要ではと感じられた。

講演内容:

  1. 「磁気リポソーム微粒子を用いた癌の温熱療法(特別講演)」
    小林 猛(中部大)

     10nmサイズのマグネタイト微粒子を陽電荷性リポソームで包んだ構造であるMCL(magnetite cationic liposome)を用いたがん温熱療法が紹介された。10nm程度以下であれば毛細血管を閉塞することがなく、また陽電荷性により表面が陰電荷性である細胞への集積性を向上させる。温熱治療に伴い原発の腫瘍部のみならず、治療していない腫瘍も縮退することを見いだし、抗腫瘍免疫の誘導とその効果を明らかにした。抗体も結合させた素材(AML)によるがん組織への特異的集積、カテーテル輸送可能な針状成形マグネタイト(SCM)を用いた温熱療法にも話題が及んだ。

  2. 「前立腺がん化学療法における磁性体ナノ粒子の効果」
    〇渡邉昌俊,佐藤明子,岩﨑有由美,深井瑛美,岡本大樹,栗岡大輔(横国大)

     前立腺がんは、日本では増えており、2020年には男性の罹患率の第2位になると予想されている高齢者に多いがんである。前立腺がん細胞株にマグネタイト微粒子を暴露した場合に、細胞内に活性酸素種(ROS)が産生する事を確認した。加えて、抗がん剤ドセタキセルとマグネタイトの併用暴露の実験結果より、抗がん剤の投与量を減らしたり、抗がん剤の組み合わせを広げるなどの効果が期待されることが紹介された。

  3. 「臨床におけるハイパーサーミア:頭頸部領域を中心に」
    藤内 祝(横浜市大)

     口腔がんは切除治療後の機能障害や審美障害が大きいことから、他の領域のがんに増して手術回避が強く求められ、温熱療法が臨床応用されている。インプラント針やMCLを用いた磁気ハイパーサーミアに加え、温熱化学放射線療法(放射線+抗がん剤+温熱治療(RF誘導加温))の臨床例、カテーテルを用いた抗がん剤の超選択的動注療法及びそのハイパーサーミアとの併用、新しい有機磁性体抗がん剤を用いた磁気誘導+抗がん剤+温熱治療の併用効果への期待などが紹介された。

  4. 「高温ハイパーサーミア機器の開発 ~ヒトでの治験と伴侶動物の症例例~」
    〇中住慎一1,藤岡徹2,小泉幸司21アドメテック、2愛媛大)

     有効な抗がん剤がなく、放射線療法も不適応であるヒト子宮頸部高度異形成の温熱治療、及び日本初である磁場誘導加温を原理とした医療機器の治験が概説された。門型の磁性体インプラントを用いて、1本のインプラントからの熱伝導範囲は限られるために複数のインプラントで加温領域を確保した。患部への入熱は約60℃、数日後細胞死領域が最大となり、その後患部は自己再生していくことなどが報告された。さらに獣医療分野における伴侶動物の症例が紹介された。

  5. 「磁気ハイパーサーミアにおけるインプラント型発熱体の利点」
    〇中川 貴1,清野智史1,山本孝夫1,権藤立男2,橋本 剛2,大堀 理2
    1阪大、2東京医大)

     前立腺がんの放射線療法に用いられる密封小線源(ヨウ素125を内包させた針状Ti)のコールドダミーとしてTi針を発熱体とした磁気ハイパーサーミアが報告された。擬似前立腺ファントム及びヌードマウスでの実験において、発熱体配置と加温範囲を明らかにした。またインプラント型発熱体の利点が詳説された。密封小線源を磁気ハイパーサーミア用発熱体として利用すれば、局所放射線治療と局所温熱治療を同時に実施できる治癒効果の高い治療法となることが期待される。

文責 竹村泰司(横国大)