第131回研究会報告

「電磁ノイズ吸収技術の高周波化、スケールダウンの現状と将来像」

日 時: 2003年7月4日(金)
場 所: 日本化学会 化学会館
参加者: 68名

  1. 「高周波EMC対策の現状と将来動向」
    吉田栄吉、小野裕司、安藤真輔(NECトーキン)

     大きな磁気損失を持つノイズ抑制シートを用いる高周波伝導ノイズ対策が一般的になされるようになってきた。本講演では今後要求されるであろうノイズ抑制シートの電磁気的な特性と、その制御方法について述べた。

  2. 「マイクロスケールのEMC対策技術と材料評価技術」 
    山口正洋、金 基炫、池田慎治(東北大)、宮澤安範、上西克二(菱和電子)

      高周波アナログ集積回路でよく用いられるコープレーナ線路を薄膜プロセスで製作し、CoNbZr、CoZrO、CoAlPdOならびにスピンスプレー法によるNiZn(Co)フェライト磁性薄膜を装着して伝送特性を測定した結果を紹介し議論した。1GHzまでの通過域では17mm長の線路における挿入損失は0.4dB以下に小さく、10GHz以上の阻止域では最大20GHzの磁気損失が得られ、電磁雑音を抑制できることを基本的に確認した。また、シールディドループコイルと側面解放型TEMセルによる新開発9GHz帯域薄膜透磁率測定装置について紹介があった。 

  3. 「ナノグラニュラー磁性薄膜のGHzにおける電磁波ノイズ抑制効果」
    大沼繁弘(電磁研)、名倉秀明(シャープ)

      GHz帯で高い透磁率を示すナノグラニュラー軟磁性膜は優れた電磁波ノイズ抑制効果を示すことを報告した。膜をパターン化することにより、反射波を抑えることができ、市販の電磁波抑制材料の1/5の厚さで同等もしくはそれ以上の抑制効果を示すことを見出している。

  4. 「フェライト薄膜の低温作製とノイズ抑制機能」
    阿部正紀、松下伸広(東工大)

      低温(< 100°C)水溶液プロセスであるフェライトめっき法で作製したNiZnフェライト膜はバルク試料のスヌーク限界を一桁近く上回る高周波透磁率特性を示し、数GHzまでの領域で実用レベルの電磁ノイズ抑制効果を示すことを報告した。

  5. 「ノイズ抑制シートのIEC規格化の現状」
    武田 茂(日立金属)

      近年、携帯電話機やノートPC等で盛んに用いられているノイズ抑制シートは、日本で最初に工業化され、今日現在20社以上のメーカーが様々な製品を上市している。一昨年よりフェライトの国 際標準を扱うIEC-TC51において、ノイズ抑制シートの規格化が行われている。講演では、この中で取り扱う超近傍界を中心にノイズ抑制効果の検証方法を主体に本規格のアウトラインと審議の進行状況を紹介した。

  6. 「吸収型高域遮断フィルタ線路によるデジタル回路のスペクトラム・マネジメント」
    三浦太郎(TDKテクノ)

      パーソナルコンピュータのバスラインにおいては、信号パルスの形状や反射波の干渉の問題が高速伝送化を阻んでいる。そこで、バスラインの信号伝送をスペクトラム・マネージメントとしてとらえ、吸収型のノイズ抑制シートを用いたバスラインの高速伝送化を試みた。その結果、伝送速度が大幅に早くなる可能性を見出した。



  本研究会は、情報通信機器の高周波化と高密度集積化による近接電磁界の相互干渉を抑制する技術が今後重要なキーテクノロジーになりつつあること、また、GHz帯で高い磁気損失をもつ材料が重要な役割を持つこと、またシート材料がすでに実用されていること等に注目して、その実用化の現状、薄膜化技術、計測・評価技術と標準化、また興味深い実用の提案など、この技術の全体像が把握できるような構成にした。この技術分野はようやく全体の方向が見え始めた段階で、どれだけ認知されているか不安があったが、予測外に多くの参加者があり、近い将来には磁気応用の新しい分野に発展することを予感させるに充分な盛況であった。      

(東北大 島田 寛)